
「世界の飢餓人口が再び増加に転じた」と報じた2017年9月の国連のレポートは世界に大きな衝撃をもたらした。10年以上もの間、着実に減少を続けていた世界の飢餓人口は2016年、前年の7億7,700万人から世界の人口の11%に当たる8億1,500万人に増加したのだ。2015年9月に国連サミットで採択された世界の持続可能な開発目標(SDGs)で「2030年までに地球から飢餓を撲滅する」と合意した矢先である。まさに出鼻をくじかれた感じになった。
国連の分析によると、飢餓人口が再び増加に転じた大きな要因の一つは、南スーダンをはじめとする世界の紛争地帯で発生している飢饉(ききん)である。長期的な内紛状態を呈するシリアやアフガニスタンなどに加えて、ソマリア、イエメン、ナイジェリア北東部などの国でも飢饉の発生や拡大のリスクが増大している。もう一つの大きな要因は気候変動の悪影響、そしてそれに関連する干ばつや洪水の発生である。とはいえ、これもまだ序の口、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)の報告書は、このままだと気候変動の悪影響は2030年から2049年にかけてさらに本格化し、将来、途上国を中心に作物の生産性低下が急速に進むだろうと推測している。
増え続ける人口と1日1人当たりの平均栄養接取量の急速な増加に伴い、世界は2005年を基準にして50年までに食料生産を60%増やさないと、食料の需要に供給が追い付かなくなる可能性があると国連は警告している。しかし本当に達成可能なのだろうか。日本はどうなるのだろうかと心配になる。
グローバル化や分業化が急速に進み、今日、われわれは地球の他の国の人々とお互いに依存・共存しあいながら生きることを余儀なくされている。その反面、紛争や飢餓で苦しむ人々にわれわれは無関心すぎるような気がする。大切な食べ物でさえ、日本はカロリーベースで60%以上海外からの輸入に頼らざるを得なくなった。世界的な大干ばつや紛争などによって、食料を海外から輸入できなくなったらどうなるのだろうか。食料価格が急騰し、スーパーマーケットには長蛇の列ができ、子供に飲ますミルクが小売店の棚から消え、消費者たちがパ二ックに陥るのが目に見えるようだ。
地球は一つ、同じ地球市民として富む国も貧しい国もお互いに共存し、支え合いながら生きている。お互いに助け合い、有るものを分かち合い、飢餓や貧困に苦しむ人たちに援助の手を差し伸べ、農業や食料を大切にする社会を構築することが、今日、より強く求められている気がする。