NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組をご存知だろうか。実は、あれにゲスト出演することが夢だったりする。
本気で出たいと思って考えてるうちに、「そこで何を話そうか」「茂木さんに何を聞かれるだろうか」とあれこれ想像してしまったりする。それが時々モチベーションになるのだから、悪いことではない。今日はそんな「妄想」の中から、私の心得を一つご紹介したい。
「あなたにとって、プロフェッショナルとは?」
番組の最後に必ず聞かれる質問である。そのとき私は何と答えるのだろうか。そう妄想に耽っていたときにふと思い出したことがある。それを今日はここに紹介したいと思う。
井の中の蛙
私は実は、井の中の蛙でありたいと思っている。井の中の蛙である時が一番幸せで、自分が一番成長していると実感できるのです。何かを夢中になってやっているその瞬間、私は自分が最高で一番であると本気で思っています(とんでもないナルシストですが)。
しかし、それは単に、自分が外の世界を知らないだけで、勘違いの何でもない事がきっとほとんどです。自分のやっていることや考えている事なんて、既に他の誰かがきっとやっていて、何ら新しいことでもすごいことでもないのでしょう。
しかし、私はそれを知らないで、自分が最高だと思ってやっています。まさに井の中の蛙です。傍から見ればただの愚か者です。周りの人たちの中には、私のやっていることが失敗に終わることまで読めている人もいるのでしょう。
しかし、私はそれすら知らずに黙々と今やっていることに全力をつぎ込み、そして最後にはやはり失敗します。まさに井の中の蛙です。
これを指して、昔の偉い人は「無知を知れ」、「井の中の蛙では賢くならない」と言ったのでしょう。『無知の知』というのは有名ですね。
しかし、私は無知を知らない方がよっぽど良いと思っていて、井の中の蛙になることこそが最も大切なのだと常に思っています。まさに、『無知の無知』です。
自分が無知であることを知らなかったために、私は失敗を犯しました。しかし、もし私が無知を知っていたとしたらどうでしょう。きっと失敗はしませんでしたが、挑戦もしませんでした。
そう。自分が何も知らないことを自覚してしまうと、他人から学ぶことはあれ、自ら果敢に挑戦していくことができなくなってしまうのです。その一方で、何も知らずに、常に自分が一番だと思って突き進んでいけば、何も不安を持たなくて良いばかりではなく、たくさんの挑戦をすることができるのです。
そして最後に私は失敗します。そこで思うのです。「ああ、俺は無知だった」と。
つまり、『無知の知』とは『無知の無知』があってこそ初めて達成できるものなわけですが、多くの人は初めから自分の無知を知って謙虚に生きることを選びます。しかし、私はそこへたどり着くまでの道のりを大切にします。『無知の無知』があってこそ、自分が無知だったと思えるのであり、そこで初めて学びが生まれるのです。
だから私は『無知の無知』を選びます。挑戦し続けるために。
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