ストックホルムで開催された世界水週間会議においてユニセフ(国連児童基金)は、女性と女の子が毎日水汲みに費やす時間は2億時間にも上ると発表しました。ユニセフは、世界全体で水のアクセスを改善に集まっている専門家に向け、これは彼女たちの貴重な時間の浪費であると指摘した上で、水へのアクセスの欠如によって機会を喪失するのは、圧倒的に女性であると強調しました。
SDGsの達成に向けて、往復30分以内で安全な水を確保を目指す
国連の持続可能な開発目標、通称SDGsが定める6番目の目標、”安全な水と衛生の保証”は、2030年までにすべての人の安全で安価な水への平等なアクセスの達成を目指しています。それに向けた最初のステップは、全ての人が往復30分以内にアクセスできるサービスを提供し、長期的な目標は、全ての人が家で安全な水を確保できるようにすることです。
しかし、国連の推定では、例えばサハラ以南のアフリカでは、人口の29%にとって、飲料として安全な水源は30分以上離れたところにあります。またこの比率は、都市部で14%に対し、地方では37%と大きな開きがあります。
家に水道がない場合、水汲みを担うのは圧倒的に女性と子ども、特に女の子です。サハラ以南のアフリカの24カ国の調査によれば、水汲みにかかる時間が30分を超える場合、推定で336万人の子どもたちと1,354万人のおとなの女性が水汲みの責任を負っていました。国連の推定では、マラウィでは女性は水汲みに平均で54分かかっているのに対して、男性は6分しかかかっていません。ギニアとタンザニアでは女性が水汲みにかける平均的な時間は20分で男性の倍です。
水汲みによる機会損失の代償とは?
女性にとって、水汲みによる機会喪失の代償は高く、その影響は広範囲にわたります。それは、女性が家族と過すためや育児をするため、他の家事をするため、また余暇を楽しむための時間を著しく短縮することを意味するからです。男の子にとっても女の子にとっても、水汲みは彼らの学ぶ時間を奪い、時には学校に通うことすらできなくなります。
また水汲みは、家族全員、特に子どもたちの健康にも影響を及ぼします。家に水がない場合、汲んでくる水自体が安全なものであったとしても、その水を運び貯蔵するため、飲むまでの間に汚染される危険が増加します。
そうなると、下痢性疾患の危険が高まることになります。下痢性疾患は5歳未満の子どもたちの4番目の主要な死亡要因であり、慢性栄養不良や発育阻害の主要な原因となっています。現在、世界中で約1億5,900万人の子どもが影響を受けています。毎年30万人以上、また、毎日800人以上の5歳未満児が、不適切な衛生状態や安全ではない飲み水による下痢性疾患が原因で死亡しています。
ユニセフが訴える!代償を払うのは、女性と女の子だ!
「想像してみてください。2億時間は830万日、あるいは2万2,800年です」と、ユニセフの水と衛生部門部長サンジャイ・ウィジェセケラは世界水週間会議で述べました。
また、「水が敷地内で得られず汲みにいかなければならないとき、ほとんどの場合において、時間と機会の喪失という代償を払うのは女性と女の子です。世界中どこであっても、清潔な飲料水へのアクセスは人々の生活を左右します。必要性ははっきりしています。達成すべきゴールも明確です。女性と子どもたちはこの基本的人権のために、彼らの多くの時間を費やすべきではないのです」とウィジェセケラ氏と訴えました。
参考記事:世界水週間(8/28~9/2)水汲みに毎日2億時間 女性や女の子が奪われる時間と機会(ユニセフ)