ベトナム北中部、ゲティン地方における民謡「ビーザム」を、JICA青年海外協力隊としてベトナムの農村開発支援NGO「VIRI」で活動中の山田邦永が紹介する。
民謡「ビーザム」とは
ベトナム北中部ゲティン地方はゲアン省及びハティン省から成り、1991年まで両省はゲティン省という1つの省だった。ゲティン地方に代々伝わる伝統的な民謡「ビーザム」は、2014年、UNESCOの無形文化遺産に登録さた。ビーザムは、ゲティン地方の人々が精神面を重視し、満たされた気持ちで日々の生活を送る上で重要な役割を果たしている。
ビーザムの調べはシンプルで素朴ながらも、非常に親近感を覚えるものである。ビーザムでは、両親への敬意、愛情、思いやり、勤勉さ、誠実さ等、大切にする価値観や美徳とすることが、ゲティン地方の方言やゲティン地方独特の表現を使って、綴られている。ゲティン地方の人々は、ビーザムを子守唄として歌ったり、また、船を漕ぎ、織り物をし、農作業をする際など、日常生活とともに歌っている。ビーザムを口ずさむことで、楽しく仕事をし、愛情を表現し、また時に悲しみを和らげることができるのだ。
ビーの歌 『ナムダンの日光』
民謡「ビーザム」には、「ビーの歌」と「ザムの歌」がある。「ビーの歌」には、主に、恋人や故郷への情熱的な想いが、農作業や日常生活の様子をとおして、綴られている。歌い手の豊かな感情を反映して、自由なリズムで歌われる。ビーの歌より、代表曲『ナムダンの日光』の歌詞を、リンク先で紹介する。ゲアン省ナムダン郡はベトナム建国の父、ホーチミン主席の故郷である。
ザムの歌 『母の子守唄』
「ザムの歌」には、主に、恋人や親子の対話が、美しいテンポとともに詩的に綴られている。心地よいテンポから子守唄として歌われることが多く、また、ベトナム戦争の際は一体感を高めるために歌われた。ザムの歌より、代表曲『母の子守唄』の歌詞を、リンク先で紹介する。
ビーザムを聴くなら「フンソン伝統民謡ビーザムグループ」
現在、多くの観光客がベトナムゲアン省ナムダン郡ヴァンジエン村の「フンソン伝統民謡ビーザムグループ」の元を訪れ、ビーザムの美しい調べを堪能している。JICA青年海外協力隊の山田邦永氏が日本人の菓子職人とともに実行したクラウドファンディングプロジェクトにおいては、支援いただいた方への返礼として本グループを訪問した。また本グループは、2018年11月25日にハノイ市内のSakura Stationで開催された日越外交関係樹立45周年記念事業「五感で楽しむ日越交流」において、聴覚に関する日越交流としてビーザムを演奏した。本グループはゲアン省観光局の発行しているゲアン省ナムダン郡観光マップでも紹介されている。