中東・北アフリカで起こったアラブの春から5年。1月15日、ブルッキングス研究所と国際協力機構(JICA)がアラブの春に関する書籍「The Arab Spring Five Years Later」を発表した。書籍は、5年前のアラブの春から何を学び、どのような開発課題があったか整理し、中東諸国がどこへ向かうべきかを検証する構成となっている。
今回発表された書籍の大きな特徴の一つは、中東諸国が抱える問題やアラブの春の原因を経済的側面から分析した点だ。中東を取り巻く環境は今なお混沌を極めているが、話題の中心は常に政治や紛争に関することばかりだった。問題の根源には経済・社会構造があり、問題の根底にある開発課題を一つずつ解決しなければならない。シンプルだが、地に足の着いた議論が展開されていて面白い。
もう一つの特徴は、執筆者のほとんどを実務家が占めていることかもしれない。それゆえ、取り組むべき分野に対し、実務的な政策提言が導き出されている。研究者が主体となって執筆された書籍や論文の多くが、実務家にとって当たり前のことだったり、政策決定の役に立たないものだったりする感覚を覚えたことはないだろうか。本書は、実務家が実務の視点から問題のとっかかりを見つけ、研究者のアドバイスのもとで分析を行っている点が興味深い。
今なお混沌とする中東情勢の引き金となったアラブの春。そうした時流もあいまって、多くの人々の関心を集める一冊となりそうだ。
※本書は2部構成で、第1部が編集長による全体総括の位置づけとなっている。