中東・北アフリカで起こったアラブの春に関するパネルディスカッションが、1月15日に開催された。ブルッキングス研究所と国際協力機構(JICA)が行った共同研究「The Arab Spring Five Years Later」の成果発表を兼ねたイベントで、ハフェズ・ガネム世銀副総裁、シャンタ・デバラジャン世銀チーフエコノミスト、山中JICA中東欧州部長など有識者が登壇し、200名以上を集める大盛況となった。ここではJICAの支援方針に関する議論の一部を振り返りたい。
研究成果をJICA事業へ活用-4つの優先分野とは?
山中氏は共同研究の価値を「開発課題を政治・経済の両面から検証し、実務的なアプローチを提案している点」と説明した。今回のプロジェクトでは研究者と実務家の垣根を超え議論を重ね、実務家が主体となって成し遂げたものだ。そういったプロセスを経ることで、研究成果はJICAの支援に直接反映することができるといった趣旨だ。
研究成果を踏まえて、山中氏はJICAが取り組む4つの優先課題を示した。
公共セクター改革
経済・社会システムの整っていない開発途上国では政府の役割が重要となる。開発途上国の限られたリソースを有効活用し、インクルーシブ成長を達成するための制度・組織改革を支援する。
中小企業のためのビジネス環境整備
ビジネス環境の整っていない開発途上国では、市場だけでなく経済活動に関する包括的な行政システムや法司法整備が不可欠だ。アラブ諸国の経済は、巨大なインフォーマルセクターが担っており、国民のほとんどがインフォーマルセクターで生計を立てている。インフォーマルセクターの担い手は中小企業が主体となっていることから、中小企業のビジネス活動を活性化させるような政策が望まれる。そうすることで、雇用を創出し、膨大な若年労働者を吸収することができるようになる。
農村開発と小農支援
都市部と農村部の所得格差が顕在化している中、農村開発を支援する妥当性は高い。灌漑や農業技術革新を支援することで、農村開発を包括的に推進することは重要な要素となる。
教育の質向上
初等教育へのアクセスは比較的高い数値を示しているが、最大の課題は教育の質にある。質の高い教育を提供することで、中長期的には労働市場へ優秀な人材を供給することが可能となる。教育政策やガイドラインの改革を通じて支援する。