東南アジアレポート 21-プノンペンにオリンピックスタジアム
2007年11月18日 Phnom Penh (Cambodia)
プノンペンは活気であふれている。毎日新しい店が街のどこかで産声を上げ、大きなビルがいつの間にか家の隣にできていたりもする。昨年、はじめて訪れたこの街で、「これが途上国っていうものか」と、率直に思ったのを覚えている。プノンペンは僕にとって「貧しい国の首都」という印象だったはずだ。しかし、今タケオから戻ってきた僕は全く逆の感想を持っている。「プノンペンは急成長している街」なのだ。
今、プノンペンでは巨大ビルの建設ラッシュがブームになりつつある。大きなマンション、オフィスビル。去年なかった建物が、今は堂々と建っている。たった 一年しかたっていないのに、街の様子はずいぶん変わって見えた。僕が変わったのだろうか。それともプノンペンが変化しているのだろうか。おそらく両方だろう。
田舎町タケオの中心部では、素っ裸にされ、水で現れている子供たちが容易に見られるし、一歩街を出るとそこには田園風景が広がる。一方、首都プノンペンには巨大なビルが立ち並び、一歩路地へ入るとゴミだらけの薄暗い道で生活する人々がいるし、どこまでも追いかけてくるバイクタクシーの運転手はマスクをして いる。この違いをどう理解したらよいのか。発展とは何か。やはり住むならタケオがいいな。
旅の資金が残り少なくなってきたので、カナダ銀行でトラベラーズチェックを換金することにした。炎天下の下、地図だけを頼りに銀行まで歩いていくと、今日は休みとのこと。元来た道を引き返す。僕の旅はいつもこうだ。その日開いているかどうかなど、行く前に調べるべきだと、よく言われる。ただ、こうしてブラブラ歩くことでまた違うものが見えてくる。そんな楽しみが僕の旅にはある。
大きなスタジアムの横を通りかかった。オリンピックスタジアム。予定にはなかったが、寄ることにした。というよりも、予定など初めからなかったのだけれど。
そもそもカンボジアでオリンピックなんてあったとは思えないけれど、なぜかスタジアムはある。そこはいつか歴史の教科書で見たローマのオリンピアスタジアムによく似ていて、競技場を囲んで円形に客席が組まれている。椅子などなく、段々になったコンクリートに腰をかけ、サッカーの試合を見た。こんなに大きな スタジアムで試合をしているのだから多少はレベルの高い試合なのかと思っていた。だけれど、オフサイドもとらない。そして、一人の選手が退場を宣告された瞬間に、全員がここぞとばかりにとび蹴りの応酬。それを見て観客はどんどん増え、歓声でスタジアムは包まれた。なんだか不思議な試合を見た気持ちだ。
カメラが故障してしまって、写真が取れなかった。