東南アジアレポート 19-タケオのバイタク(モト)とトラブル
2007年11月17日 Takeo (Cambodia)
昼下がりの田舎町は活気であふれていた。僕は人口わずか4万の小さな町のど真ん中に降ろされた。太陽の日差しが眩しい。しかし、それ以上に周囲の視線が四方八方から強烈に僕に注がれているのを感じた。観光客などほとんど来ないであろう。同じアジア人とは言え、日本人とカンボジア人は肌の色も違えば、骨格も異なる。それゆえ、市場の真ん中に取り残された僕は明らかに浮いていたのだった。
気 温はゆうに35度はあっただろう。そこで立ち往生している内に気力も体力もどんどん奪われていく温度だ。右手にガイドブックを抱え、一人目のバイクタクシーに声を掛ける。「このゲストハウス知っていますか?」もちろん英語で。すると次から次へとバイクが集まってきた。まるで暴走族に取り囲まれている錯覚に襲われた。そして口々にクメール語で何か話し出した。どうやら誰もその場所を知らないようだ。みんな首を横に振っていた。
「知らん」と言われては、こちらも困る。「どこの国へ行っても、タクシーの運転手は街を熟知しているはずだ」という予測の上に行動している。だから、困ったときの頼みの綱はいつのときもタクシーなのだ。
「ここだって!」ほんの少しだけ語意を強め、本の中の”Boeung Guest House”という文字を指差した。それでも彼らは首を振った。どうやら全く英語がわからないらしい。それでも彼らは着いて来る。なぜ着いて来る。場所もわからないのに、「乗せてやる」と言って着いて来る。ジェスチャーで「一人で行く」と強がり、ずんずん歩いて見せた。もちろん、どっちの方角へ歩いたらいいのかもわからない。ただ、相手がハッタリで勝負してきたので、こちらもハッタリで受けてたったまでだ。
そんな不思議なやり取りの末、一人のドライバーが手を大きく振り、身振りで「俺が友達に聞いてやる」と申し出てきた。言葉がわからなくても、本当に何とかなるものだ。結局コンピュータショップの店員がその場所を運転手に助言し、連れて行ってもらうことができたのだった。
宿を押さえ、外へ出てきたときに、彼はまだそこにいた。「俺が街を案内してやるよ」という身振りをしている。「3,000リエルだ」というから、彼に任せることにした。
大都会プノンペンとは打って変わって、大自然。大自然の真ん中に申し訳程度にオアシスが栄えているといった感じだ。いったい誰がこのような街を設計したのだ ろうか。湖の畔は石が綺麗に積まれているし、あちこちに石のモニュメントがある。ただただ、見とれる大自然がそこにはあった。
30分もバイクで走り回ると、この小さな街をだいたい見ることができた。途中、写真のモデルになってくれ、最後はゲストハウスまできちんと届けてくれた運転手に本当に感謝しなければならない。ただ、最後にひと悶着あったことは付け加えておこう。
30分のツーリングが終わり、僕は3,000リエルを渡したその時である。「ムオイポアン!ムオイポアン!」突然だだをこねだしたのだった。はじめ、全く理解できなかった。約束どおりの金額を渡したのに、「もう1,000リエルくれ」とせがんでいるのだ。結局その当初の2倍をもっていかれることになったが、よい勉強になったと、自分を納得させたのだった。