南スーダン

紛争と人々

Photograph: UNDP South Sudan/Brian Sokol
Photograph: UNDP South Sudan/Brian Sokol

米国の俳優ジョージ・クルーニーが設立者の一人であるアドボカシープロジェクトであるSentryが紛争が続く南スーダンの紛争当事者であるサルバ・キール大統領と反政府勢力を率いていたリーク・マチャール前副大統領を始めとする政府高官が紛争によって私腹を肥やしているとの報告を発表した。

私は南スーダンに前職のNGOの職員として駐在経験があり、2013年12月にキール氏とマチャール氏に代表される政府と反政府勢力との紛争の勃発によって国外退避した。この報告の内容は個人的には「やはりそうか」と思わされるものである。報告には紛争当事者がこの国の根強い部族間対立を利用・「操縦」して紛争を長引かせたとも述べている。

私はこれまで「テロとの戦い」を行っている国を含む紛争国、紛争後国・地域に計15年近く関わってきた。これは誰もが抱く考えであるが、この経験を通じて紛争とはいかなる「大義」が立てられようとも、権力と利権の奪取・確立を巡るものであるとの思いを強くしている。

これの犠牲となるのはやはり多数の無辜の市民である。南スーダンでも約1千万人の人口に対して80万人以上が難民、約160万人が国内避難民となっており、犠牲者はこれまでで数万人と言われている。

紛争による被害や後遺症に苦しむ人々への緊急・復興支援に私は携わっている。このような人々が安心して暮らすには本来的には法の支配の下の自由な経済活動、これの基盤をなすインフラの構築、教育や保健衛生などの社会サービスの提供、そして根本的な人権の尊重が不可欠であるが、紛争中・紛争後の国々では政府に以上を担保するに十分な意思・能力・ガバナンスが欠如している。また、敵対勢力との抗争に明け暮れ、多くの資源がこれに割かれる。この状況に人々は放置される。

こうした状況に対するNGOとしての私達の役割は草の根の人々を緊急的に支援し、その後、エンパワーし、彼らが本来もつレジリエンスを強化することを支援するものであろうと強く思う。せめて個々人がコミュニティや地域レベルででも力をもち、それを発揮していけるように支援する。彼らが「けっして見捨てられてはいない」と感じ、本来もつ力を発見し、これを伸ばしていくことを手伝うのだ。また、彼らの社会が紛争前よりよい状態になること(build back better)を目指して彼らが自立できるよう貢献する。

南スーダンでは経済的に恵まれず、十分な教育の機会を得られなかった若者を対象にサービス業(ホテル・レストラン産業)に就業するための職業訓練も行っていた。これを通じ、多くの若者達が就職した。その後、新たな可能性や機会に気づき、出世を目指したり新たな勉強を始めたりした者もいる。そして、紛争が勃発したが、彼らは最低限、何とか食べていくための技能と自信を獲得したものと思う。

紛争に翻弄された人々が恨み(grievance)を抱き続け、これが紛争の種や助長要因として利用されないように支援を行うことも重要だ。NGOとしては限られた人々・地域・分野しか対象にできないが、いかにこうした人々への支援を他の組織・関係者やマクロレベルの支援につなげられるかということも真剣に模索している。紛争に苛まれ、囚われた社会が変化するにはもしかしたら一世代以上かかるかもしれないが、けっして悲観せずに、支援対象の人々があきらめることがないように、辛抱強くしたたかに関わっていかねばならないのだとも思う。

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