南スーダン、国民暫定政府の設立日を4月29日に
マイケル・マクエイ・ルエス情報通信技術郵政大臣は、国民統一暫定政府内閣が宣誓を行った4月29日を国民暫定政府の設立日とすると発表した。
これは5月10日、サルヴァ・キール・マヤルディト大統領が議長を務める国民統一暫定政府初の臨時会合の後マクエイ大臣が記者団に語ったもので、「政府が和平合意内容を計画通り履行できるよう、合意内容を見直す必要がある。」と述べた。
大臣はまた、「政府及び反政府勢力ともに和平合意内容の実施が遅れており、和平合意(で示されたタイムライン)は更新される必要がある。反政府軍の兵舎問題に代表される数多くの問題が、和平合意実施を遅延させている。」と発言した。
引用元:April 29 marks beginning of 30 months of TGONU: Makuei (THE DAWN – 2016年5月11日)
南スーダン駐在員による解説
2013年12月に南スーダンで勃発した紛争を収束させるため、地域経済共同体の一つであり東アフリカ7か国が加盟するIGAD(政府間開発機構)、AU(アフリカ連合)、UN(国際連合)、米国、中国、英国、EU(ヨーロッパ連合)、ノルウェー及びIPF (IGAD Partners Forum)で構成されるいわゆるIGAD-PLUSが「南スーダンにおける衝突の解決に関する和平合意」を2015年7月23日に策定。IGAD-PLUSによる南スーダンの紛争当事者への粘り強い働きかけにより、先にリエク・マシャール現第一副大統領が和平合意書に署名し、その後2015年8月26日にジュバでキール大統領が署名したことにより和平合意が結ばれた。
国民統一暫定政府(TGoNU: Transitional Government of National Unity)は、同和平合意書第一章に基づいて設立されたもの。
第一章には、暫定期間は30カ月間とされているので、2018年10月末までが暫定期間に、また暫定期間終了の60日前までに国政選挙を実施するとあるため、国政選挙は2018年9月~10月に行われる予定となる。
他方、留意すべき点として、暫定政府の設立は和平合意の約束の期限から既に約5カ月間遅延した事実がある。和平合意では、署名日から90日以内に国民統一暫定政府が設立することとされていた。和平合意第二章には、反政府勢力等の帰還を促進するため、署名日から90日以内に一部の例外を除いてジュバの半径25キロ以内を非軍事化する約束になっていたが、本件の履行は不透明な状態が続き、リエク・マシャール氏はジュバの安全が確保されていないとして、帰還を渋ったのだった。このように、和平合意に示されたタイムラインから現時点ですでに実施が遅れていることに鑑みれば、上記に示した暫定期間も選挙実施時期も、あくまで目安と理解する必要がありそうである。
記事中でマクエイ大臣が言及している「反政府軍の兵舎問題」は赤軍に関わる投稿で触れた「28州問題」に並んで、政府と反政府勢力の間の軋轢として顕在化している問題である。本件については改めて現地報道記事をもとに詳しく触れることにしたい。
参考文書
- 南スーダンにおける衝突の解決に関する合意文書(2015年8月17日)
- 国民統一暫定政府閣僚一覧(在ドイツ南スーダン共和国大使館HP)