タクシー運転手の途上国開発談話。今回はソマリア系移民の運転手が熱く語ってくれた。西欧経済圏で暮らしながら母国へ馳せる思い。台頭する中国。祖国へ残してきた実家。家族経営の農場。アフリカの仕事をしていた、ソマリア難民支援をしていたと伝えると、運転手の話が一気に熱を帯びた。
― 出身地
ソマリア
― 年齢
1967年生まれ。47歳。
― 職業
タクシー運転手。
― タクシーの運転手をする前はどのような暮らしを?
ソマリアでの暮らしはとても豊かなものだった。弟と両親の5人家族で、小さな家族だったが、父は大農園の経営者だった。牧場には常に200頭の家畜がいて、果物畑にはマンゴー、バナナ、オレンジの木。季節に応じて色を変える、色彩豊かな自然環境で育った。
― ソマリアへの想いは?
私たちの豊かな国はクーデターでバラバラになった。西欧の侵略はひどいものだった。ソマリアの国土は分断され、フランス(ジブチ)、イギリス(ソマリランド)、イタリア(ソマリア)に同時に支配された。今でも多くのソマリ人がそれぞれの『国』にいる。
クーデターの後、経済的な支配が継続された。最近では、イギリス、カナダ、アメリカが石油の掘削を開始した。ソマリア沖の油田から石油をとっていく。西洋人のやり方は好きではない。ソマリアの資源をとっていき、最後は武器を売りつける。そして、疲弊した国土と人々に対して人道支援を行う。人道支援で潤うのは、西洋の企業であり、ソマリ人ではない。経済的支配、武器の提供、人道支援。「合法的なやり方」でソマリアをどん底に陥れたのは誰だろうか。
私は中国を歓迎している。全てのソマリ人も同意するだろう。最近、中国も石油の掘削を開始した。彼らが西洋人と異なるのは、ソマリ人へ利益の半分を分けてくれるところ。ソマリアには石油を掘削する技術がない。中国は技術を提供し、利益を配分してくれる。これ以上良いことはない。
西洋人は中国のやり方を悪く言う。「金の亡者だ」と。それでもソマリ人は中国員の手にキスをして歓迎するだろう。ソマリ人はアメリカ人が来た時も歓迎した。でもアメリカ人は食糧と同時に武器もばらまいた。中国人は少なくとも利益の半分をくれる。中国のほうがましだ。
― ソマリアへ帰りたい?
もちろん。でもソマリアへは住まない。過激派は自分を諜報機関のエージェントとみなすだろう。家族が保有している土地を売りたい。かつて保有していた農場は、推定4億円と言われている。ただ、国が安定するまでは売らないつもりだ。土地の権利書は今でもアメリカの銀行へ大切に保管している。ソマリアに戻れば裁判所がこれを正当な権利書として認めるだろう。
※談話はあくまで個人の意見であり、客観的な見解ではありません。