外務省が実施中の「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の骨子に関するパブリックコメントの募集」に対し、意見書を提出しました。ここでは要点を絞って、ご紹介したいと思います。
今回提出した意見は、国外の取り組みに係るもの。これらは新しい事業形成を促すものではなく、日本がこれまで実施してきた取り組みや現在実施中の取り組みの「見せ方(発信の仕方)」を工夫することで、日本のSDGsへの貢献をより効果的に国際社会へ発信することを念頭に置いています。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を社会保障と不平等是正と関連付ける
総論として、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を通じた日本の取り組みを、UHC(SDG 3.8)だけでなく、社会保障(SDG 1.3)や不平等是正(SDG 10.4)とも関連付けて指針を検討し、より多くのチャンネルで国際的に発信をしていくことを提案します。
ミレニアム開発目標(MDGs)からSDGsへの移行で最も大きな変化は、貧困の削減から撲滅へと舵を切ったことにあります。つまり、貧困撲滅を念頭に置いた場合、貧困状態から脱出した低所得者層・中間層が再び貧困状態に陥らないための政策・制度設計が重要となるわけです。
開発途上国の低所得者層・中間層は、病気・災害・高齢化など、ライフサイクルで誰にでも起き得るショックによって貧困へ陥るリスクをはらんでいます。したがって、貧困撲滅を掲げるSDG 1の重要なアプローチとして、社会保障システム(健康保険、老齢年金、失業保険、生活保護等)の包括的な整備が、2030年までの喫緊の課題として国際的に認知されている(SDG 1.3)のは必然といえるでしょう。
日本が推進するUHCのコンポーネントには既に、貧困層に対する健康保険(医療保険)の拡充が入っています(参照:ケニア国「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成のための保健セクター政策借款(JICA)」)。その点で、社会保障の拡充を促すSDG 1.3とは深い関連性があると言えます。
また、UHCと社会保障を関連付けるのであれば、不平等是正(SDG 10.4)への貢献も関連付けることが可能となります。UHCのコンポーネントにある貧困層に対する健康保険の拡充に関する政府予算は、開発途上国では税財源となることが多いです。開発途上国の低所得者層は保険料を免除(減額)されることが多く、社会保障制度が所得再分配(不平等是正)の役目を果たすことが期待されています。
以上を踏まえれば、日本政府が既に行っているUHCに関する開発援助を、UHC(SDG 3.8)だけでなく社会保障(SDG 1.3)や不平等是正(SDG 10.4)と関連付けることは大きな可能性を秘めています。これによって、社会保障や不平等といった保健以外のチャンネルで日本の貢献を国際的に発信することが可能となると考えられます。
- 日本政府がSDGs実施指針の骨子に関するパブリックコメントを募集(2016年10月21日掲載)
- 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の骨子に関する意見書(全文)