ルワンダ

ルワンダのジェンダー予算と女性のエンパワーメント

Photograph: CGIAR Climate

ヒラリー・クリントンが北京で1995年に開催された国連の女性会議で「もし女性が対等なパートナーとして、働き、稼ぐことができれば、家族はより繁栄することができる」とスピーチを行った[1]。それから、8年後に、ルワンダ政府はジェンダー家族推進省及びイギリス国際開発省主導の元2003年にジェンダー予算の取り組みを始めた。経済協力開発機構(OECD)によると、ジェンダーギャップは教育、雇用、企業、人生における機会やそれに付随する形で現れるなど様々な分野で見受けられる。そのギャップを埋めるための手段がジェンダー予算だ。政府が予算を配分する際にジェンダー平等を後押しする計画を立案することで、政策立案者はジェンダーギャップを埋めるように予算配分計画を立てるため、ジェンダー平等が推進されるというものだ[2]

それから、15年経ったが、現在ではルワンダの経済発展及び貧困削減戦略II(2013-2018)では、ジェノサイドの影響もあり[3]ジェンダーはルワンダ発展のフォーカルポイントとして位置づけられている[4]。ルワンダ政府の見解によると、いくら政策上でジェンダー平等を謳ったとしても、予算がジェンダー平等を後押しするよう分配されなければ、ジェンダー平等には効果的ではないということだ。そして、何と言っても、ルワンダのジェンダー予算で最も特徴的なのは、ジェンダー予算の取り組みは省庁レベルのみならず、地方政府、議会、高等教育機関、民間企業など多岐に渡ることだ[5]

ルワンダでジェンダー関連のカンファレンスに出席した際には、ジェンダー予算のことが何度も取り上げられていた他、参加者の男女比率もほぼ半々で、ジェンダー平等はルワンダでは男女両方にとって関心の高いトピックであることを肌で感じることができた。確かに、以前交換留学でノルウェーのオスロ大学に一年間留学し、ジェンダー学の講義を取っていた際にも、男性のジェンダー研究者が、ジェンダー平等を達成するためには、片方の「性」を置き去りにしてはならないと述べていた。個人的な意見だが、男性がジェンダー平等への関心が高いほど、女性のジェンダー平等への関心も高く、女性の社会進出を後押しする制度や社会規範の素地があるように感じた。ジェンダーギャップが埋められるほど、国全体の経済が発展するため[6]、今後のルワンダのジェンダー予算の動きから目が離せない。


[1] Museum of Fine Arts Boston. 2018. Transcript: Hear Hillary Clinton’s Women’s Rights Are Human Rights.
[2] OECD. 2018. Gender Budgeting.
[3] Lacey. 2005. Women’s Voices Rise as Rwanda Reinvents Itself.
[4] The Republic of Rwanda. 2013. Economic Development and Poverty Reduction Strategy II 2013-2018.
[5] Ministry of Finance and Economic Planning (MINECOFIN). 2008. Republic of Rwanda Gender Budgeting Guidelines.
[6] UN Women. 2018. Facts and Figures: Economic Empowerment.

THE POVERTIST 2018年9月1日号

新興国の挑戦 2018年9月1日号 好況が続く世界経済は、中所得国を高所得国へ押し上げただけではなく、多くの低所得国を中所得国へ「卒業」させた。「中所得国の罠」で語られるように、中所得国は特有の新しい挑戦に立ち向かわなければならない。

THE POVERTIST 2018年8月1日号

残された課題 2018年8月1日号 暗い影を落とした金融危機の記憶はとうの昔に人々の脳裏から離れ、好況に沸く世界経済の恩恵を多くの人々が笑顔で迎えている。経済成長が貧困削減を推し進め、広がる格差に歯止めを掛ける政策は後手に回っている。

実務家の連載を募集します

THE POVERTIST編集部では、開発途上国の課題や政策に携わる実務家の連載を計画しています。業務を通じて携わる地域や開発課題について発信しませんか。

大学院生の連載を募集します

THE POVERTIST編集部では、開発途上国の課題や政策を学ぶ大学院生の連載を計画しています。大学院のコースワークの中で得られた知識やオピニオンをタイムリーに発信しませんか。

Comments are closed.