高校時代に自身が経験した貧困体験、サッカー選手になれなかった悔しさを元に、国際協力の専門家になることを夢見て一念発起。JICAでのインターン、総合商社、国際NGO、英国大学院を経て国際機関で勤務する筆者の経験談。
前回の投稿で大学時代の話、NGOの仕事につくまでの話について書かせて頂きましたが、今回から数回はNGOで働く事についての所感、そしてNGO職員として過ごしたガンベラ難民キャンプでの話につき、紹介できればと思います。
私がNGOで働くという選択肢を考えるようになったのは、一つの偶然の出会いからでした。
それは、前号でも少しご紹介させて頂いた、南アフリカでお会いした当時ユニセフの職員をされていた女性との出会いです。その方から、「将来国際機関で働く選択肢を目指すとしても、必ず現場を理解しておくことはプラスになる」という言葉を頂き、NGO/NPO職員という選択肢が自分の次の進路候補に出てきました。
ただ、NGO/NPOは、日本ではまだまだ職業の一選択肢としてはそこまで広く認知はされていません。
実際、私がNGO職員として現場で働きたいという想いを抱いてから色々と情報収集して決断をするまでには、色々な疑問をクリアにし、自分の中で納得感を持って進路を決める必要がありました。たとえば、NGO/NPO職員の給料はどれぐらいなのか、現実問題それで生活をしていけるのか、実際には現場でどのような役割を担っているのか等々。
その間の情報収集で、まず大事にしたのが、「人に会いにいくいき、生の情報を取ること」です。
具体的なアクションとしては、
- 東京で開催している、NGO/NPOの活動報告会に行き情報収集すること
- 長期休暇を使って現場で働いている職員の話を聞きにいくこと(社会人時代休暇を使っていった国は10カ国以上。貯めた貯金、商社で働いてる時のボーナスのほとんどはこの現場訪問に使っていたため、貯金はほとんどありませんでした)
この過程を試す中で、自分のモチベーションを確かめることもでき、かつ、現場に長期休暇の度にいくことによって、モチベーションを保つことができました。
そして、商社勤務を始めてから3年ちょっとした時に、自分の「現場を見たい、現場で働きたい」という気持ちが確固たるものになったので、給料は3分の1ぐらいにはなりましたが、NGOに転職する覚悟を持つことができました。
なぜ、この覚悟が必要なのか?
それは、日本では当たり前に享受できる様々なメリットが受けられなくなるからだと個人的には思います。日本食をいつでも食べることができる環境、会いたいときに家族、友人に会えること、安定したインターネット環境、等々言い出したらキリがありませんが、日本にいたら当たり前にアクセスできる生活インフラや友人との交流を諦め僻地で事業を進めていかなければならないからです。
さて、前置きが長くなりましたが、私が2014-16年の間関わりを持たせてもらった難民キャンプはエチオピアの西部、南スーダンとの国境付近に位置するガンベラ難民キャンプです(ピンの辺りがガンベラです)。
先ほど記載した通り、ガンベラでの暮らしは簡単なものではありません、エアコン等ない中での40度近くの気温、インターネットがつながらないことも多々ある環境の中、日本人の現地事務所駐在員一人で、現地スタッフ20-30人のマネジメント、国連機関や他NGOとの調整の中で、事業を進めていくことは容易ではありません。
こういった過酷な環境や多くのチャレンジを乗り越えて、事業を成功させるためには、「強い覚悟」と「モチベーション」が必要不可欠と思います。なぜ途上国で働きたいのか?なぜ国際協力に関わりたいのか?そんな根本的な問いへの自分なりの答えをどこかでもっておくことが、困難を乗り越える根源的な力になると思います。
次回以降はガンベラ難民キャンプで、どんな事業を行っていたのか、事業運営のつらかったこと、楽しかったこと、チャレンジだったこと、等々について、書かせて頂きます。
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