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貧困線を1.90ドルへ世界銀行が変更-貧困率は10%未満へ

Photograph: Asian Development Bank
Photograph: Asian Development Bank
※この記事は2015年10月に書かれたものです。別の記事で貧困指標についてアップデートしましたので「開発途上国の貧困の定義と計測方法のまとめ(2016年5月3日掲載)」も併せてご覧ください。

世界銀行が貧困ライン(国際貧困線)の定義を1.25ドルから1.90ドルへ変更すると発表した。これまで、開発途上国の貧困率を計測する際に、1日あたり1.25ドル未満で生活する人々を絶対的貧困層としてきた。しかし、今後は1.90ドル未満で生活する人々を貧困層とみなすこととなる。

なぜ1.25ドルから1.90ドルへ?

そもそも、1.25ドル貧困ラインは2005年の購買力平価(各国の物価の違い)を考慮して設定されたものだ。つまり、2005年の物価水準で、食糧や生活必需品を購入することができる最低ラインを貧困ラインとしてきた背景がある。

しかし、過去十年で世界経済は成長を遂げ、開発途上国でも物価上昇が著しい地域も現れてきた。そうした地域の住民は、もはや1.25ドルでは最低限の生活を営むことができなくなった。1.25ドルで計算される貧困率が実態に合わなくなってきたと言うわけだ。

そこで今回、世界銀行は1.90ドルに引き上げることとしたわけである。1.90ドルの根拠は、2011年の物価水準にある。つまり、2005年の最低限の生活水準を営むには、2011年には1.90ドル必要ということだ。

世界の貧困率が史上初めて10%未満に

世界銀行は同時に、2015年の世界の貧困率が9.6%まで改善する見通しを示した。この推計によれば、2012年との比較では12.8%から3%改善し、人口で見ても貧困層は9億人から7億人へ減少する。

持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「2030年までに貧困を撲滅する」ことに関し、世界銀行は「3%まで減少させることは可能」としてきた。世界銀行のプレスリリースを見る限り、今回の貧困線引き上げに伴う「前言撤回」はないようだ。

開発途上国の貧困率の比較には、1.90ドルが今後使われることになるだろう。そして、世界の援助関係者は、2030年までに1.90ドル未満で生活する人々をゼロにすべく、動き出すこととなる。


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