民主主義は貧困削減に不可欠である。そういう意見がある。あるというよりもむしろ、それが通説となっている節がある。昨今の開発援助の議論の中で、民主主義の 重要性を語ることはもはやあたり前となっていて、世界銀行、国連、政府系機関、どこの援助機関を見ても、「ガバナンス」部門は必ずある。「被援助国におけ る政治が安定しなければ、援助が効果的に行えない」というのはもはや不動の論というわけだ。
民主主義の重要性にもはや疑いの余地はないのか。
たしかに、内戦や汚職まみれの国へ行って効果的な援助などできるわけもないのだから、こうした議論は間違いとはいえないのかもしれない。貧困削減の視点か らいっても、効果的にそれを行うには、民主主義はきっと不可欠なのだろう。しかし、逆説的に「民主主義は貧者にとって有益か?」と問うてみると、それは必 ずしも正しいとはいえないようだ。
『現実世界の「アバター」ストーリー:企業の搾取と戦う先住民族』という興味深い記事を見つけた。映画を見ていないので、映画についてコメントすることはできないが、話題の映画「アバター」を現実世界と重ねて書いているようだ。本記事中で、著者はこう述べている。
「世界中の先住民は、何十年にも渡って鉱物・木材・石油・天然ガスなどの資源の搾取を最優先する大企業との衝突を強いられている。」
さらに、ペルーやマレーシアの例を挙げながら、「大企業や政府は手を組んで立法をしてまで、合法的に先住民の土地を搾取しようとしている」と煽る。
その真偽は定かではない。しかし、仮にこれが真実だすると、民主主義の名の下に「多数者(政府)」が「少数者(先住民)」を支配していることとなる。事実、開発途上国における経済政策は少数民族の生活を侵すこともしばしばある。
果たして民主主義は少数民族を守れるのか?民主主義は彼らの貧困状態を改善することができるのか。課題は残る。