国際

貧乏人の経済学-良い案件は証拠なしにはあらず

Photograph: Ippei Tsuruga
Photograph: Ippei Tsuruga

良い案件に出会ったことは一度たりともなかった。少なくとも、貧困削減を目的とする案件に関しては、「良い」案件は一つもなかった。過去10年間いろいろな立場で途上国の貧困問題に取り組んできた。経験則からすれば、「良い」案件はたいてい証拠なしに「良い」と決めつけられる傾向がある。

どの事業モデルを全国展開すべきか。政策決定者、援助関係者と議論する場面を想像してほしい。政治、組織の都合、個人の思い入れ、その他の説得力のない不完全な証拠によって、「良い」案件が仕立て上げられる。ランダム化比較試験(RCTs)の開発援助モデルの事業評価へ応用する手法に出会うまでは、私はもどかしい思いで仕事をしていた。なぜなら、「良い」案件として紹介される案件すべてが、何の証拠もなく「良い」と言われていたからだ。

先週、ほとんど使われていない書棚に目をやった。偶然にもそこには「貧乏人の経済学」がごろんと転がっていた。バネルジーとデュフロが世に送り出した名作Poor Economics。たった4年前の出版物ということに驚かされる。既に開発学の定番書籍の一つとなった印象さえある。

貧乏人の経済学は不思議な力を持っている。普段仲の悪い研究者と実務家を結びつける力。それは、精緻な科学的検証によって、開発案件を評価することを推奨している。貧困削減ひとつをとっても、そこへ向けたアプローチはいくつもあり、仮説をいくつも立ててアプローチしても、それが本当にインパクトをもたらすかはやってみなければわからない。

この記事の全文はこちらから(英語)

参考文献

Comments are closed.