高校時代に自身が経験した貧困体験、サッカー選手になれなかった悔しさを元に、国際協力の専門家になることを夢見て一念発起。JICAでのインターン、総合商社、国際NGO、英国大学院を経て国際機関で勤務する筆者の経験談。
前回の投稿で国際協力の仕事へのモチベーションの原点について記載させてもらいましたが、今回の投稿では、大学時代の話、新卒で入社した商社時代の話、NGOというキャリアを選ぶまでの期間について書かせて頂きます。
前号で書いた通り、国際協力の仕事に就きたいという想いは、自身の高校時代の経験から来ています。ただ、漠然と国際協力に関わりたいとは思っていたものの、大学時代は特にこれといった分野に絞ることができずに色々と悩んでおりました。国際協力の専門家といっても色々な仕事やアプローチがある。法律、政治、経済、医療、文化人類学、プロジェクトマネジメント、財務、教育、紛争解決。自分は何がやりたいのか。
その道で活躍している人の本を読んだり、人に会いに行ったりしましたが、中々ピンとくるものが見つかりませんでした。自分は一体何がやりたいのか?サッカー以上に自分が熱くなれるものは見つかれるのか?もしかしたら、見つからないまま、今後の人生を流しながら、生きていくのか。
不安と焦りの中で、大学生の1-2年の時は毎日グルグルとそういった問に自分の中で立ち向かいつつ、答えの見つからない中で、やりきれない感覚とともに過ごしておりました。そんなある日、高校時代に一緒にサッカーを頑張っていた友人と会う機会があり、彼と話をしていく中で、まだ大学でもサッカーに全力で取り組んでいること、夢を追っているという話を聞く機会がありました。
その日の夜家に帰ったら急に自分がダサく思えてきて、自然と涙が溢れてきました。。友人に比べ、自分は打ち込めるものすらなく、なんとなく日々を流しながら生きていること。高校時代必死で頑張ってサッカーをしてた時の気持ちを思い出し、自分自身夢が見つけられないことを言い訳に頑張ることを先延ばしにしている自分がどこかにいることに気づきました。
「何でもいいから目の前にある機会に本気で取り組んでみること」
そのアクションを取ることでしか、将来のことなんてわからない。まずは漠然と思っていること、これだと思えるものがなくても、絞れていなくても国際協力に通じていそうなものなら何でもやってみよう。腹を括ることができました。
途上国へのバックパッカー、JICAへのインターン、NGOでのボランティア等手当たり次第に機会を見つけては取り組んでいきました。動く中で広がっていく人脈、開けていく自分の考え方、世界観、面白い人に会ったときのワクワク感。
これを成長と呼ぶのかという実感が少なからずありました。
そして、大学卒業後の新卒では、総合商社に就職しましたが、それは主には3つの理由からでした。
- 利益最優先の民間企業に勤める中で、効率的に仕事を回していくスキルが身に就く事
- 途上国の社会問題に対してビジネスモデルで解決策を作ることはどれぐらいできるのかを知りたいということ
- サッカーをやっていた時のように熱く世界中の仲間とともに、何かに打ち込める会社で働きたい
この3つを満たせる会社・団体を複数受けた後に商社に辿り着きました。
商社では組織全体のキャパシティを人材面から向上させること、会社全体のPR活動、人材採用・育成に関わる機会を頂きました。その中で、数千人の働く組織全体の根幹を強くすることで、全体の底上げが図れることを実感し、組織づくり、ガバナンスに関心を持ちました。
2011年の春にエジプトを訪れた際に、アラブの春の真っただ中、国全体が変わっていく瞬間を垣間見たことからも、国造り、ガバナンスというものに興味を持っていた自分としては、今考えれば、商社の組織づくりに関わる中で色々と組織論を勉強できたことは今のガバナンス・平和構築の仕事にも大いに役立っています。
また、スピード感を持って、チームで一つの目標に向かって協力しながらアプローチしていく楽しみを知りました。3年半ほど商社で働く中で、夏休み等を利用して、アフリカの5カ国をアジアの3ヵ国を訪問しました。その中でも特にアフリカの辺境の地で、最も人々の助けが必要とされている場所、ビジネスのスキームではアプローチしにくいスラムや紛争国を訪問するなかで、「紛争現場等で働きながら、現場でのオペレーションに関わってみたい」という思いが強くなり、アフリカ訪問時にたまたま遭遇した元NGO職員、当時ユニセフで働いていた女性の助言、紹介でNGOの仕事を知り、また「THE現場」で働く醍醐味を知りたいとの思いで、NGOへの転職を決意しました。
次回からは、NGOでの仕事について学んだ事、NGOの強みなどにつき、自分なりの考えを記載していきたいと思います。
THE POVERTIST 2018年9月1日号
新興国の挑戦 2018年9月1日号 好況が続く世界経済は、中所得国を高所得国へ押し上げただけではなく、多くの低所得国を中所得国へ「卒業」させた。「中所得国の罠」で語られるように、中所得国は特有の新しい挑戦に立ち向かわなければならない。
THE POVERTIST 2018年8月1日号
残された課題 2018年8月1日号 暗い影を落とした金融危機の記憶はとうの昔に人々の脳裏から離れ、好況に沸く世界経済の恩恵を多くの人々が笑顔で迎えている。経済成長が貧困削減を推し進め、広がる格差に歯止めを掛ける政策は後手に回っている。
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