あの日から5年
2015年3月11日、東日本大震災から5年。多くのメディアで震災当時の様子が語られている今日、ここでは当時あまり「被災者」としての注目を集めなかった若年女性たちの姿を映し出したある調査報告書を紹介したい。
「声が聞こえない、見えない=存在しない、問題がないではない」
2011年3月11日の東日本大震災から4年後の2015年3月、仙台防災会議が開催された。同会議にあわせ、 『東日本大震災・被災地の若年女性調査と提言:被災から4年「忘れられた世代」若年女性20人の声を聞く 』という報告書が発表された。同報告書は、(特活)オックスファム・ジャパンによる助成、NGO・BONDプロジェクトによるインタビューとNGO Gender Action Platform(GAP)の政策分析により作成された。同報告書は、被災当時10代から20代であった女性20名(当時、岩手県、宮城県、福島県在住)を対象に震災が彼女たちの生活や心身に及ぼした影響をインタビューによって明らかにしたものである。
インタビューの結果、対象となった女性たちのおかれている「脆弱性」は概ね共通のものであった。さらに、同報告書ではインタビューの対象女性を「レジリエンス」の度合いに応じ4つのグループに分け分析を行った。そして、 レジリエンスの高い人材ほど自己の災害によるダメージからの回復(就職等)が早く、また復興支援の主体として社会とつながり貢献しているという分析結果が得られた。
政策に求められるもの
同分析結果を背景とし、同報告書では以下の政策提言をしている。思春期・若年女性のレジリエンスを高め主体的に自己決定が出来る能力を高めるともに、彼女たちの存在と声を可視化し政策課題化する土壌づくりをすることが求められている。
1. 思春期・若年女性の問題の可視化・政策課題化
2. 地域の復興及び地方創生における若年女性の参画推進
3. 思春期・若年女性のエンパワメント(自己決定能力の向上)
国際潮流との間にギャップ
国際レベルでは、2014年3月には、第58回国連婦人の地位委員会(Commission on the Status of Women: CSW)において日本政府発起の「自然災害とジェンダー」決議が79カ国の共同提案国を得て採択された。同決議では、以下の3点を強調している。
1. 防災、災害対応、復旧・復興の各段階における思春期の女の子の脆弱性や特別な配慮の必要性を広く共有し、政策・計画・制度に反映させること。
2. 支援ニーズを把握し、可視化するために、男女別・年齢別の統計を拡充すること。
3. 防災、災害対応、復旧復興を含む意思決定過程に若年女性の参画を確保すること。
このような防災・復興支援政策におけるジェンダー主流化が求められる国際潮流の中で、 日本国内の防災・復興という脈路での思春期・若年女性に関する情報・知見は稀有であり、ジェンダーの主流かという国際潮流、「自然災害とジェンダー」決議案を含む国際合意から大きく遅れているのが現状である。