東南アジア

東南アジアの少子高齢化、社会保障は万全か?

Photograph: YuJin Lim
Photograph: YuJin Lim

東南アジア諸国は歴史上稀にみる高度経済成長に沸いている。しかし、光もあれば闇もある。経済規模が拡大するにつれ、世界経済の荒波に揉まれるリスクは高まり、少子高齢化時代の到来も近い。これからの10年、東南アジア諸国が直面する挑戦は人類が初めて経験するものかもしれない。中低所得国にもかかわらず、少子高齢化が進んだ例は少ないし、世帯規模の変化、労働力人口の減少などもまた、経済規模からすれば歴史的に珍しい傾向といえる。こうした状況を踏まえ研究者は、「社会保障制度の充実が持続的な経済と政治的安定のために不可欠」と言う。

2015年2月に刊行された論文は、老齢年金・所得補助の役割について議論を展開している。東南アジア諸国はどういった問題に直面するのだろうか。また、それらの課題をいかに克服することができるのだろうか。

人口動態の傾向から推測すれば、タイとブルネイを除く、ほぼ全ての東南アジア諸国で高齢化が進むと考えられる。老齢人口は今後十数年で約2倍となることが予測されている。こうした顕著な傾向は老齢人口に限ったことではない。若年層と老齢人口の両方で、労働力人口の増加が停滞が予測されている。

一方、各国はそれぞれの事情にあった対策を検討する必要があるのも事実。シンガポールとマレーシアでは、100~300万人。フィリピン、タイ、ベトナムでは500~1,000万人。インドネシアに至っては2,000万人が今後十年間で高齢者の仲間入りを果たす。少子高齢化の傾向とスピードが、それぞれ異なることも、こうした議論においては重要となる。

さらに、「社会保障の拡充」と一言でいっても、実践するためには様々な改革が必要となる。財源確保はもちろん、医療・教育サービス提供側の運営体制強化も不可欠。少子高齢社会を迎えるにあたって実施体制が整備されているとは言えず、公共財政管理、インフラ、社会サービスのそれぞれの実施体制の強化が急がれる。

先ほどご紹介した研究論文は、社会政策を取り巻く盲点も指摘している。

以下の表で示されているように、いくつかの東南アジア諸国はユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成しつつある。しかし、ここでいう「カバレッジ」とは、法的にサービスを受けることができる人々の割合を指しているのであって、実際の人口割合を示しているものではない。大半の医療費が自費で負担されていることを見れば、社会保障制度が十分な手当を支給できていないことがわかる。

同論文は、東南アジア諸国が高齢化傾向にあることを分析し、それに伴い発生しうる開発課題に着目している。こうした分析をしたうえで、老齢年金とその他の社会サービスの役割について検討する構成となっている。

Legal and Effective Coverage of Pensions and Healthcare Programmes in ASEAN

参考文献

Asher and Zen (2015) Social Protection in ASEAN: Challenges and Initiatives for Post-2015 Vision

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