カンボジア

女性への暴力予防の鍵は?-国際女性の日に寄せて

国際女性の日(International Women’s Day)は、1975年に国連により定められました。女性の人権を保障し経済・社会・政治等あらゆる側面でジェンダー平等を促進することが目的です。

2016年のスローガンは「2030年までにプラネット50-50を実現:ジェンダー平等を加速させよう(Planet 50-50 by 2030: Step It Up for Gender Equality Planet 50-50 by 2030: Step It Up for Gender Equality)」です。

「ジェンダー平等」の促進の鍵を握るのは誰なのでしょうか?

昨年、国連ウィメン(UNWOMEN)は「HeforShe」というジェンダー平等を促進するためのグローバルキャンペーンを打ち出しました。UNWOMENの親善大使となったエマ・ワトソンは「ジェンダー平等は男性の皆さんの問題でもあるのです」とスピーチで強調しました。国際的には、ジェンダー平等の促進には男性の参加が不可欠であると認識されています。

では「男性の参加」とは具体的にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。今回はカンボジアで行われている「女性への暴力予防」の取り組みを紹介したいと思います。

2015年に、女性省及び国家統計局 が発表した「女性の健康と暴力の経験に係る全国調査(National Survey on Women’s Health and Life Experiences in Cambodia)」によると、カンボジアでは特に「親密な男性パートナー(Intimate Partners: 現在の夫もしくは前夫を意味)」による女性への身体的・性的・感情的・経済的暴力と、「犯罪者」による15歳前後の女性への 性的・身体的暴力の2点が深刻な問題となっています(詳細はこちら)。2013年に 国連のジョイントプログラム「予防のためのパートナーズ(Partners for Prevention: P4P)」が実施した調査『Why Do Some Men Use Violence against Women and How Can We Prevent it?: Quantitative Findings from the United Nations Multi-Country Study on Men and Violence in Asia and the Pacific』においても同様の報告がなされています。

それではこのような暴力の予防のためにカンボジアではどのような活動が行われてきたのでしょうか。いくつか事例を紹介します。

 

1. 啓発キャンペーン

2007年から2014年にカンボジアではスペインのNGOであるPyD(Peace and Development)、UNFPAと女性省が中心となり「女性を尊重しよう(Give value to women)」をスローガンにグッド・マン・キャンペーン(Good Men Campaign)がカンボジア全土で展開されました。テレビ、ラジオなどのマスメディアを通じた啓発番組の放送から、Facebookなどのソーシャルメデイアやオンラインゲームを通じた参加型アクティビティ、またワークショップやイベントが開催されました。

 

2. 暴力予防のための授業・ワークショップ

暴力予防を目的とした男性・少年向けの教材開発及び授業やワークショップが実施されています。ここではいくつかの教材を紹介したいと思います。

『ジェンダーの正義のために男性らしさを変革する(Transforming Masculinities toward Gender Justice)』大学生前後の青年男性を対象とした教材。国連ウィメンの助成を受けカンボジアのCSOsを中心として開発されました。カンボジアの大学教材として近年中に正式に採用予定です。

『ジェンダーに基づく暴力の問題への若者のためのツールキット:交際における役割と責任の意識向上を目指す(A Young People’s Toolkit On Issues Connected to Gender-Based Violence: Raising Awareness on Roles & Responsbilities in Relationship)』15−18歳の男女を対象とした暴力を予防するための指導者向け教材。GIZの助成と支援を受け女性省により出版されました。

今回は「女性への暴力予防」という切り口よりいかにジェンダー平等を促進させるか、カンボジアを事例に「男性の参加」の視点からお話をさせて頂きました。

「ジェンダー平等」は持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)のひとつであることからもわかるように開発課題のひとつとして位置づけられています。しかし、日本は、「ジェンダー平等」、また「暴力の予防」のための大切なパートを担う「性と生殖に係る(Sexual and Reproductive Health and Right)教育」についてもまだ遅れが目立つと国連からも指摘されています。途上国で行われている活動の中には、時に日本における政策形成や案件実施においても役立つアイディアがあるのではないかと思います。

世界中の女性が暴力を受けることなく、また経済・社会・政治等のあらゆる側面でジェンダー平等が達成されることを願っています。

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