バングラデシュでITエンジニア向けの国家資格
私がバングラデシュに駐在していた2012〜2015年のうち、非常に思い入れの強かったプロジェクトに「ITEEマネジメント能力向上プロジェクト」がある。簡単に言うとバングラデシュに国家試験としてITエンジニア向けの資格を導入しようというプロジェクトである。なぜそのプロジェクトが必要だったか?それは資格取得を通じてバングラデシュIT人材の可能性を可視化し、それを外国企業に売り込む材料にしてもらうことで、IT人材にチャンスを与えるとともに、バングラデシュ政府が積極推進しているIT輸出に貢献できるのではと考えたからである。
そして何より、日本企業とのビジネスに繋げてもらい、日本とバングラデシュのITビジネス交流を活性化させたかった。プロジェクト期間の三年間、一緒にプロジェクトを動かしてきたメンバー(保谷チーフアドバイザ、庄子専門家、そして(独)IPAの方々)とともに、日本に帰るたびに関係者に会い、IT関係企業の出張者が来るという情報を得ては会う機会を作り、数多くの日本のIT企業に「バングラデシュに進出しませんか?」と営業活動を行ってきた。
そしてその成果はどうだったか?というと、国家試験としての導入には成功したものの(過去記事)、本邦企業の進出や本邦企業からの採用という観点では、まだまだこれからという状況であった。オフショア開発(日本などでITサービスの設計をして、外国で開発すること)の条件として「日本語で発注したい」というニーズや、中国やベトナムと比べIT系の大企業が少ないことなどもあり、悔しい思いをしたことも多かった。
ITビジネスでバングラデシュへ進出(Framgia社)
さて、前置きが非常に長くなったが、そのような中で、実際に進出してくれてITビジネスを行っている企業がある。今回はそういった企業のうちFramgia社を紹介したい(バングラデシュ支社のFacebookページはこちら)。
Framgia社はベトナムでのオフショア開発を中心に事業を伸ばしている日本のIT企業である。一般的な下請けとしてオフショア開発を発注するというよりは、現地スタッフの将来性も考えて一緒に作ることに重点を置いている印象がある技術力のある企業である。
進出前には何度も日本やベトナムから幹部クラスがバングラデシュへ来てくれて、私やプロジェクト関係者と何度も意見交換を行う機会があり、彼らのIT企業としてのビジネスはもちろん、人材育成事業としての熱い思いに大いに盛り上がった。日本語の言葉の壁については、ベトナムを間に挟むことで英語での業務を中心としてバングラデシュで開発を行っていて、現在は20−30人規模で首都ダッカで事業を行っている。
次のリンクは現在、現地代表としてバングラデシュで活動している稲田史子さんに関する記事である。(本投稿の写真はこちらの記事から使用)
「人生の原点を思い起こさせてくれたのが、バングラデシュでした」1億6000万人が住む国で、稲田史子が挑む「IT×教育」事業とは?
この稲田さんは、アライアンスフォーラムやJICAインターン時代(当時留学中)から公私ともに仲良くさせてもらった1人で、陰ながら応援しているし、ぜひ頑張ってほしい。(当時はまさかFramgia社の現地代表になるとは予想してなかったが。)彼女の目指す、ITという世界共通の言語で、国を越えて戦える人材を育てて、それで世界で活躍してもらうという事業。まさに我々のプロジェクトで目指していたことを民間企業という立場して実践しようとしている。
そして、ここからは予告編になるが、このFramgia社はベトナムでの事業の一環として、JICAがハノイ工科大学と行ったIT人材育成事業の仕組みを引き継ぎ、IT人材育成事業を継続・発展させ、日本語力とIT力を備え持つ人材を輩出し続けている。ODA事業を元に民間企業がビジネスを行うという理想的かつ珍しい事例なので、そちらについても後日紹介したいと思う。
バングラデシュのITビジネスに関しても、他にも熱い思いで日バの架け橋になろうと奮闘している人たちが何人もおり、記憶の薄れないうちにその情報も逐次アップしていきたいと思う。