「エチオピア」と聞いて何を連想するだろうか。援助関係者ならば、世界最貧困国の一つであること、アフリカ連合(AU)本部のある国といったことを思い浮かべるのではないか。また旅行好きの人ならば、世界遺産である岩窟教会郡のある「ラリベラ」やナイル川の源泉のひとつである「青ナイル」を思い出すのではないか。しかしここでは、一般 の人々にもなじみの深い、「コーヒー」についてお話したい。
アフリカの角
エチオピアは、「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部に位置する内陸国である。首都のアディス・アベバは標高2,400m(富士6−8合目程度)に位置している。国土の広い山国のため、低地ではじりじりとした暑さが続く日もあるが、 大半の地域の年間平均気温は13度。 雨期には軽いダウジャケットを羽織り、朝方には暖炉をたくこともしばしばである。
コーヒー発祥の地
エチオピアはコーヒー発祥の地と言われている。コーヒーの名の由来といわれる南部諸民族州に位置するカファ、 シダモ地方や、中東部のハラール等が主な生産地とされている。コーヒーはエチオピア経済を支える主要輸出産品の一つとなっている。また、エチオピア産のコーヒー豆は100%オーガニックであることも特徴である。
コーヒー・セレモニー
エチオピアでは、コーヒー・セレモニーと呼ばれる伝統的な習慣がある。日常生活から大きなお祝い事など様々な場面で目にすることが出来る。緑草を床に敷き詰め、チュスと呼ばれるお香を炊くところからセレモニーは始まる。女性が豆を洗い、炒り、粉状にし、水と豆を同時にポットに入れ煮立て上澄みをカップに注ぐ。特徴的なのは、ミルなどを使わず棒状のものを使い、豆をすりつぶすことだろう。また、おつまみはポップコーンが主流である。エチオピア人は、この濃厚なコーヒーにお砂糖をたっぷりといれる。地方によっては、バターを入れるところもある。ミルクの代わりだそうだ。
エチオピア・コーヒー専門店トモカコーヒー
このような伝統的なコーヒーの飲み方から発展し、エチオピアにも大衆向けのコーヒー専門店がいくつか存在する。その中の先駆け的存在といえるのが「トモカコーヒー」である。創業者が1953年に首都アディス・アベバにイタリア人コーヒー職人を呼び寄せ、イタリアから機材を調達しコーヒー焙煎専門店として開店したのが始まりである。現在では、1店舗あたり、1日2,000人を集客するエチオピアを代表するコーヒー店舗の一つとなった。昨年、東京代々木上原に昨年第1号店が開店し、エチオピアの本格コーヒーが日本でも堪能することができるようになった。
官民連携
昨今では、森林に自生するコーヒーの木から収穫したコーヒーを「森林コーヒー」として輸出する農家の取り組みも見られる。森林保護を兼ねた持続可能なコーヒー産業の支援は、消費者の環境配慮への意識の高揚も相まって民間企業からの関心も高まっている。 例えば、UCC上島珈琲株式会社は、2003年より国際協力機構(JICA)が実施するプロジェクトを通して生産されたエチオピア産モカの販売を行っている。2016年3月には、同社で初となるエチオピアでのコーヒー品評会も実施された。
エチオピアの文化であるコーヒーは今後も世界中の人々を魅了していくだろう。