世界銀行のWorld Development Reportによれば、世界の貧しい人達(いわゆる貧困層)はトイレや安全な飲み水へのアクセスよりも携帯電話にアクセス出来るようになっていると言う。だが、その一方で、約60億人近くの人達は高速インターネットアクセスはない。1日のGoogleでの検索回数は40億回以上だが、依然、世界の40億人以上がインターネットへアクセス出来ない環境にいる。
そんなインターネットアクセスがない40億人以上の市場に向けて、ネット接続不要なPCが開発・リリースされた。「Endless」というこのPCは、PC本体のなかに辞書やWikipedia、学習用コンテンツなど100種類以上のアプリを最初から内蔵しており、ネット接続がなくても十分使えるというのがウリ。「途上国では意外にテレビは普及している」という観点からモニターはテレビ画面を使う想定で、モニターは付いていない。卵みたいな形はなかなかオシャレ。本体価格が79ドル(24GB)と99ドル(32GB)。ネットに繋ぐ事も出来、接続すればコンテンツのアップデートが可能。
Endlessの成功を予想するのは結構楽しみである。そこで、関連して過去の投稿「一人に一台、タブレットPCを配りますか?」を紹介したい。この投稿では、以下のクイズについて説明している。
クイズ:
『貧困ライン以下の生活をしいられている発展途上国の田舎の学校。生徒数は30名。必要な教育用コンテンツやソフトが既にインストール済み30台のタブレットPC(ノートPCや携帯電話に置き換えてでも良い)が学校にあるとしたら、この30台のタブレットPCを、生徒一人に一台ずつ配りますか?』
この回答は是非、上記のリンクから当該投稿を見てもらいたいところですが、一言で言えば、ICTの利活用の成功・失敗には非常に多くの要素が絡んでいるということ。「途上国ではネット接続がない→ネット接続がなくても使えるPCにニーズあり!」という発想には賛同できる。ただ、成功するためには、誰がどういうシチュエーションでEndlressを使ってどういうメリットを得られるのか?という詳細なストーリーが必要な気がする。
ふと思うと「途上国では電気がない→ソーラーパワーで充電出来るPCにニーズあり!」という発想で開発されたPC(カナダの会社が作ったSOLやサムソンのソーラーPC)は果たして成功しているのか・・・?
少なくともネット接続がない40億人を「40億人市場」と大雑把にくくるのは間違っている。日本の1億人ですら、もの凄く細かな粒度でマーケティングされているのに。
「途上国」、「貧困層」、「BOP」、「アフリカ」など、(目新しいけど)大雑把!な捉え方から、よりブレークダウンして具体的なストーリーを想像することが、成功には不可欠なんだと思う。Endlessがどこまで成功するか?は、Endlessがどこまで具体的なストーリーに基づいて開発されたのか?にかかっているのだろう。