2年に一度、国を跨いで引っ越しを繰り替えしていると、自然と身の回りのものが少なくなっていく。世間ではノマドという言葉が流行っているようだが、何も格好つけてやっているわけではない。
ショッピングへ出かけても、「どうせ引っ越しで持っていけないのだから買わない」ということが多くなる。そうしているうちに、捨てることを前提に買い物をするようになって、不要なものは身の回りから消えていく。
結局最近では、引っ越しの時はスーツケース2個に全財産が収まるようになった。生活必需品を厳選して持ち歩くとモノが減っていくのかもしれない。
「なぜ、子供の教育が大切だと思うのですか?」
スーツケースに荷物を詰めていると、必ずいつも思い出す話がある。カンボジアで聞いた話だ。
カンボジアの貧しい家庭では、子供の教育以外にもお金を使いたい部分は山ほどあるはずだ。
それにもかかわらず、誰に話を聞いても、必ず教育が最も大切だという。
それで聞いてみたのがこの質問。答えは核心に迫るものだった。
「戦争も知識は奪えない」
長い内戦を経てカンボジアの人々は、たくさんのものを失った。
戦争が起きれば家やモノは全て置いて逃げなければならず、国の経済もボロボロになる。
その結果、自国の通貨も信用できず、カンボジアで流通する貨幣はいまだに外国通貨(米ドル)がほとんどだ。
こうした歴史を経て導き出された答えが、「知識は何があってもなくなることはない」というものだった。
質の高い教育を受ければ、何があっても、家族を養っていける。
何気ない会話の中で交わされた言葉が、強く脳裏に焼き付いている。