開発援助のアクターが多様化しています。国連はこれまでもこれからも開発援助の主要なアクターであり続けると考えられるものの、その役割は変わりつつあるのかもしれません。今回はUNDPの組織改革や国連予算から開発援助の潮流を紐解いてみたいと思います。
コア予算とノンコア予算とは?
国連開発計画(UNDP)などの国連機関の予算の大部分は、OECD-DAC諸国(先進国)からの拠出金によって賄われています。拠出金はコア予算(別名:コア基金、通常予算)とノンコア予算に分類されます。
コア予算とは、ドナー諸国から使途を特定されずUNDPが自由に使うことのできる予算です。職員給与、在外事務所運営費、基幹プロジェクト経費など、組織運営に不可欠な予算がここから支出されます。ノンコア予算は、特定のプロジェクトに使われることを前提としてドナー諸国が拠出する予算のことです。UNDPが使途を自由に決めることのできない予算であり、コア予算をより多く確保することが、独自性・中立性を担保する上で重要とされています。
国連予算は先進国の国内問題?
しかし、国連機関が直面している昨今の課題は、コア予算が減少傾向にあることです。なぜこのような状況が生まれたのでしょうか。拠出金を負担するドナー諸国にとって頭の痛い問題は、国連へ多額の税金を投入することによる見返りが見えにくいことです。コア予算は一旦拠出してしまうと、他ドナーの予算と「混ぜこぜ」にされてしまうため、せっかく拠出しているのに自国のプレゼンスが見えにくい問題が指摘されています。先進国経済が停滞する中、厳しい国民生活をよそに国連機関へ拠出する意義はどこにあるのか。税金の使途に関する国民の視線が年々厳しさを増しています。こうした先進国の国内事情から、国民への説明責任を果たしにくい(拠出することの正当性を明確に示しにくい)コア予算は敬遠される傾向にあるのが現状です。
他方で、国際社会は対GDP比0.7%の政府開発援助(ODA)を先進国へ求めています。当然、世界のリーダーであり続けたい先進国はこの期待を無視することはできません。国際社会の要請と納税者の厳しい視線の中、先進国政府が下した苦渋の決断は、次の2点でした。
- コア予算は減らすこと。
- ノンコア予算を増やし、拠出金の水準は維持すること。
つまり、拠出金の割合をノンコア予算へ多く振り分けることで、「国連が実施する日本のプロジェクト」と説明しやすくし、国際社会における責任を継続して担っていくこととしたのです。
コア予算とノンコア予算。マニアックな用語に聞こえるかもしれませんが、世界の開発援助の潮流を直に感じることができる生々しい現状がそこにあります。
※この記事は1月15日に開催された開発フォーラムの二瓶直樹氏による発表を参考に、執筆者の見解を加えて再構成したものです。