ラテンアメリカ

現金給付は家庭内暴力を軽減するか?

photo credit: World Bank Photo Collection via photopin cc
photo credit: World Bank Photo Collection via photopin cc

現金給付は家庭内暴力を緩和するのか?

多くの現金給付プログラムは受給者に女性を指定している。これは男性に現金を渡すよりも、女性に給付する方が貧困削減や人間開発に良い効果をもたらすとされているため。また、家庭内で抑圧されてきた女性が現金を握ることで女性の地位向上が実現できる、といった援助する側(先進国)が好むロジックも一つの要因だろう。

現金給付が女性の地位を向上させるのなら、女性に対する家庭内暴力が減るのではないか。国際食糧政策研究所(IFPRI)カリフォルニア大学の研究者がエクアドルの現金給付プログラム(Bono de Desarrollo Humano)のインパクト評価を通じて興味深い結果を示した。


家庭内教育格差に注目?

1. 女性が初等教育(6年間)修了以上の学歴を持っている場合、現金給付は、女性に対する心理的な家庭内暴力を8パーセント軽減する。

2. 女性が夫より同等かそれ以上の学歴を有する場合、現金給付は、女性に対する心理的な家庭内暴力を9パーセント増加させる。

現金給付と家庭内暴力の関係では、女性の教育水準が高ければ高い程、女性に対する暴力が軽減されるわけでは必ずしも無く、夫の学歴にも影響されるようだ。肉体的な暴力ではなく心理的な暴力に焦点を当てている点も興味深い。

政策立案者は受給家庭内の教育格差にも配慮する必要がありそうだ。

この記事の全文はこちらから(英語)。

Reference
Hidrobo, M., Fernald, L. (2013) Cash Transfers and Domestic Violence. Journal of Health Economics, Vol. 32, pp.304-319
Hidrobo, M., Fernald, L. (2012) Cash Transfers and Domestic Violence. Draft Working Paper

Comments are closed.