カンボジア政府は貧困線(貧困ライン)の定義を変更した。直近の貧困指標については、新しい貧困線を用いて計算されている(先日の記事)。今回は新しい貧困線について少しご紹介する。
カンボジア政府がこれまで使用していた貧困線は、1993年~1994年に収集された社会経済調査(Cambodia Socio-economic Survey 1993-94)に基づくもの。これは、世界でも指折りの急成長を遂げる国の実情に合わなくなっていた。そこで、政府は現在の国民生活を指標に反映すべく、消費の計算方法をまず見直した。例えば、かつては持ち家の家庭の場合には「家屋の価値」を「消費」としてカウントしていたが、今回からはカウントしていない。不動産の高騰が激しいため、不動産の潜在価値を鑑みると消費レベルが実態よりはるかに高く計算されてしまうためだ。
そしてもう一つの変更点は、食糧貧困線(Food Poverty Line)。これまでは2,100キロカロリー相当の食費を基準に貧困線を決めていたが、今回からは2,200キロカロリーとなった。詳しい変更内容と理由は、カンボジア計画省のレポート(pdf)を参照頂きたい。
貧困率への影響は?
世界銀行の推計値を比べてみたい。新しい貧困線を採用した場合、貧困率が高く出ているのがわかる。
なぜ世界銀行とカンボジア政府の推計値が異なるのか?
実は、世界銀行とカンボジア政府の貧困率の推計値は微妙に異なる。はっきりとした説明がなされてないが、恐らく理由は2つある。まず、データクリーニング。両者が分析を始める前に、怪しい数値(入力ミスと思われる数値等)を意図的に排除しているかどうか。また、どういった基準でそれらを削除したか。これらが明確に示されていないが、差異を生んでいる可能性がある。
2つ目は、政府が実際の支出のみ消費としてカウントしているのに対し、世界銀行は欠損値埋めるために統計的に推計している箇所が散見される。これが2つの推計値が異なる主要な理由と思われる。実際に、2004年のデータより2010年のデータのほうが欠損値が少なく、それを反映してか、両者の貧困率の差が縮小している傾向がある。
いずれにせよ、大きなトレンドは大差がなく、さほど気にすることもない。
Reference