カンボジアレポート 3-空から見たプノンペン
2006年3月24日 Phnom Penh (Cambodia)
黄土色の土。地平線まで広がる田園地帯。赤い屋根。
午前9時台北発の飛行機に乗ってから3時間半。徐々に機内の温度が上がり、上着を脱ぎだす乗客。真っ白な雲海を抜けるとそこは果てしなく広がる赤土の大平野だった。
真っ黄色の大地に浮かぶ申し訳程度の緑は、まるで毛が抜け落ちてしまった栄養失調の動物を思わせる。時折見える池らしきものも、この高低のない平坦な土地では、流れのない真っ赤な汚い水たまりにしか見えない。
赤土は熱帯特有で、水分が蒸発してしまい、土の表面に鉄分や塩分などが残ることによって生じると高校の地理の時間に習った記憶がある。
また、記憶どおり、カンボジアは米の大産地であるようだ。今は乾季の終わりで1年を通して最も暑い時期だ。だから、田んぼは枯れ、真っ赤な土がむき出しになっている。雨季に来ていれば、地平線まで広がる田園風景は実にすばらしかっただろうに。
そんなことを考えながら、やけに揺れる急降下と手荒い着陸に不安を覚えつつも、無事ポチェントン空港に降り立つことが出来た。ハッチを一歩出た瞬間に、体 でカンボジアを感じた。覚悟していたものの、10秒で汗が吹き出てくるとは思いもしなかった。冷えた飛行機内であれ程嫌がっていたクーラーが恋しい。
ポチェントン空港は首都プノンペンに立地することからも、長い内戦の中で重要な場所であり続け、1997年の首相派閥間の闘争の場(注)にもなった。最近になって空港は立派に整備され、軍服を着た兵士や警官が厳(いか)つい笑顔で迎えてくれる。
後で感じたのだが、空港よりも先に整備すべきものはたくさんあるのではないか。と言うのも、後に触れるが、カンボジア政府は慢性的な金欠であり、学校など のインフラ整備や公務員の給料さえも十分に供給できていないのである。形から入るという国民性がこんな所にも表れているのだろうか。彼らは形から入ること が本当に好きなようだ。格好付けたがるというか・・。
(注)フン・センとラナリットという2人の首相が存在していたが、2人は犬猿の仲であり、1997年7月5日、再びカンボジアは内戦に突入した。この戦闘 はプノンペンの市街戦となった。もっとも、リーダー2人は内戦勃発前に、国外へ避難していたようである。結局は戦いたくない国民が犠牲になったのである。 2006年4月7日現在フン・センが首相である。