カンボジアレポート 12-メコン川の船着場にて
3月25日 SvayRieng (Cambodia)
見渡す限り地平線まで田んぼの平野。その真ん中を突っ切ってこのワゴンは南東へ進んでいる。しばらくすると、小さな町が見えてきて、それまで快調に走っていた車が渋滞に巻き込まれた形になった。
とても不思議な感じがした。車の普及率がそれ程高いわけでもないし、道路の幅もかなり広い。渋滞なんて起こりえるはずがないのである。
後部座席で腕組をしながら、「なんでカンボジアの田舎町で渋滞なんてあるのだろう」と一人でその理由を考えていたのだけれど、すぐにそれは解決した。渋 滞の原因は車が多いわけでも、人身事故でも、はたまた牛の行進でもなく、単に船着場で船を待って並んでいただけだった。カンボジアでは橋の設置も遅れてお り、メコン川のように大きな川を渡る時は船を使うらしい。
そういう訳で船着場では必ず車が止まって、渋滞するのである。ここで考えられることは、「車を持っている人=多少は裕福な人」という構図だ。当然そこには物売りが集まり、市場ができる。そしてちょっとした町のような状態になるのである。だから辺りは人、人、人。
そこへ僕らの乗っている車が停車ものだから、一瞬で包囲されたのは言うまでもない。ちょっと大き目のワゴンに乗っている外国人といえば、間違いなくお金を持っているとわかるのだろう。
コツコツとあちこちから窓を叩かれる。頭にザルを載せたおばさん。手を合わせて物乞いをする人。良くも悪くも、有名人がマスコミに囲まれているような絵だった。
そこで代表の方が何やら不思議なものを買った。見た目は正直言って気持ち悪い。緑色の物体で、ブツブツの点がたくさん付いている。正体は「蓮の実」ということだった。これを食べるらしい。
あまり気が進まなかったが、若者+男ということでなぜかたくさん貰った。皮を剥くと真っ白な丸い実が姿を現した。これはカンボジアでは胃に良いと言われ ているそうだ。実の形とその効用から、イメージ的にはドラゴンボールに出てくる「仙豆(せんず)」だ。これが食べてみると意外に普通で、パクパク食べると いう感じではないにせよ、問題なく食べられた。
そうしている内にフェリーが到着し、ぎゅうぎゅう詰めで載せられ、沈まないかどうか不安だったが何とか対岸へ渡ることができた。そしてまた南東へ走り出したのである。