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開発援助の説明責任-アカウンタビリティとビジビリティ

Photograph: Kayo Takahashi
Photograph: Kayo Takahashi

ビジビリティ。援助業界で働いていると政府機関、国際機関、NGOのどこに所属していても、耳にたこが出来るほど良く聞く言葉であろう。「ドナーへのビジビリティを保つこと」「我々のビジビリティが確保されているか」等々。直訳すると「ビジビリティ」とは「目に見えること」。ここでは、ビジビリティは具体的にどのようにすると確保されるのか。またなぜ、「ビジビリティ」が昨今の援助業界にとって大切なのかを考えてみたい。

 

看板・ステッカー・ロゴ

Photograph: Kayo Takahashi
Photograph: Kayo Takahashi

途上国の学校や保健所に脚を運ぶとしばしば 、学校名とともにその国とドナー国の国旗や援助機関、NGOs等のロゴがプリントされた看板を目にすることはないだろうか。また、中に配置された機材のひとつひとつには、必ずといっていいほど「From the People of Japan」「From the People of the UK」「UNFPA」「UNICEF」といったステッカーが貼られている。

また、現地政府 はドナー国、様々なステークホルダーとともに大小様々な会議やワークショップ、イベントを開催している。その際に設置されるバナーには、必ず主催者とドナーのロゴが印刷される。イベント内でのスピーチでのドナーへの「謝辞」も重要なポイントだ。同様に調査報告書などの出版物にも制作主体とドナーのロゴがプリントされる。

 

映像作成・インターネット等での情報発信

援助の案件は必ずしも、学校建設や保健所建設など「目に見え形に残る」支援だけではない。難民支援や、現地政府の能力強化など「ステッカーを貼る」ことの出来ない支援も沢山存在する。このような場合、「ドナー」への謝辞や「実施主体」を明確にしながら、支援の様子を映像として作成したり、インターネット上で活動の様子を発信したりということがしばしば行われる。

 

「ビジビリティ」を保つこと=「アカウンタビリティ」を果たすこと

Photograph: Kayo Takahashi
Photograph: Kayo Takahashi

ビジビリティを果たすこととはなぜ重要か。筆者は、「ビジビリティ」を保つことは「アカウンタビリティ(説明責任)」を果たすことであると考える。では、誰に対する説明責任を果たすことが大切なのか。まずは、裨益者である。裨益者に援助主体を明確に伝えることで、受けているサービスへの改善点や問題点を見つけた場合、援助主体にそれを伝えることができる。そして、次に説明責任を果たすべき相手は「ドナー」である。援助された資金が如何に使用されているか、会計報告書上だけではなく、「広報効果」の観点からも「ドナー」への説明責任を万人がわかる形で果たす必要があると考える。

 

「アカウンタビリティ」の先にあるもの

アカウンタビリティを果たすその先に何があるのか。少々シビアな言い回しになるかもしれないが、次の予算を確保するためということができるのではないか。例えば、国連への出資国は予算拠出 を、使い道のより明確なプロジェクトベースのノンコアファンドへ今後相対的に増額していくという決断を下した。(詳細は「国連予算と拠出金に見る開発援助潮流」参照)。昨今良く目にする「UNDPと日本政府とのパートナーシップ」といった類いの案件が増加していくということだ。資金の使途をより明確にし、国連への出資国からの拠出を少しでも確保することが狙いだ。

2国間援助についても課題は変わらない。一見「ドナー」に見える政府援助機関も政府全体からの予算配置に左右される(詳細は「公共財政管理とは?」を参照)。政府からの予算が削減されれば、ドナーとしてできることが限られてくる。ビジビリティを保つことでアカウンタビリティを果たし続けることは予算配置のための最低条件になるだろう。

「ビジビリティ」を保つということは、予算が削減傾向にある援助業界において、予算を確保するための重要な活動のひとつである。質の高い案件を形成・実施するとともに持続可能な予算確保をしていくことが援助従事者の共通の課題となっていくだろう。

 

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