日本では2015年にTPP(Trans-Pacific Partnership、環太平洋パートナーシップ協定)が大筋合意に至ったことが話題になったが、貿易政策、特に食料品の貿易政策は日本に限らず常に論争を呼ぶ。特に途上国においては食料貿易政策は食料安全保障、貧困問題に影響を与えるため開発の観点から非常に重要だが、食料の自由貿易化への反対意見を聞いていると、自由貿易や産業保護という経済的・社会的側面だけで論じられているわけではないようだ。その背景を紐解いていくと、端的に言えば農業開発を巡る「成果」対「プロセス」という倫理的対立、つまり何に最も価値を置いているかが異なるために起こる衝突、すれ違いが見えてくる。
シリーズ「農業開発の倫理とは‐食料貿易論争を通じて見える2つの視点」では、食料貿易を切り口に「成果」と「プロセス」の倫理的対立について紹介していきたい。これは開発事業全般で見受けられる対立かもしれない。
- 農業開発の倫理とは-食料貿易論争を通じて見える2つの視点(1月26日掲載)
- 貿易は脅威でも万能薬でもない(1月27日掲載)
- 食料-取引可能な財(1月28日掲載)
- 農業-途上国の多くの人びとのなりわい(1月29日掲載)
- 農業を巡る倫理的観点-経済・社会的観点とは異なる視点(1月30日掲載)
- 開発でも2つの視点を(1月31日掲載)