カメルーン

布問屋街への誘いーアフリカンプリントと地元の生活を感じる週末

Photograph: Saki Ito
Photograph: Saki Ito

週末。数週間に一度、ほぼ習慣になっている布問屋街の散策に出かける。カメルーンに到着して1年強、少なくともミシンを買ってからの10ヶ月程、私の休日と布は切っても切れないものとなっている。いつもと少し違うことといえば、ちょうどお昼過ぎなので、アフリカンプリントの問屋が連なる通りに行く前に腹ごなしすることだろうか。

Photograph: Saki Ito
Photograph: Saki Ito

布問屋街と同じイスラム教徒が多い地区「ブリケテリ」にある、Cinquante cinquante (50 50)という4軒ほど小さい炭火肉屋が並ぶ場所に行く。Cinquante cinquanteではローストチキン、ローストポーク、牛肉の串焼きなど、色々な肉が選びたい放題だが、今日のお目当ては牛肉串焼き。ボンジュール、と挨拶して、串焼きを頂く。店主は黙々と焼き、2度焼きしては暖かいのを私の前にどんどん置いてくれる。1本10円、食べたいだけ食べて、もういいや、と思ったところでお勘定をするという、日本の串揚げを彷彿とするシステムだ。

そういえばこの肉はどこの肉なのか?カメルーンは気候、民族、その他諸々の多様さから「アフリカのミニチュア」と呼ばれている。砂漠気候に近い極北からアマゾンに次ぐ熱帯雨林を擁するコンゴ盆地にかかる南部・東部まで、バラエティ豊かな10州で構成されているが、畜産で有名なのは真ん中あたりのアダマウア州。聞いてみたらやはりここの肉もアダマウア産とのことだった。精算後、ちょっとマニアックな確認をして、店を後にする。

腹ごなしを終えて向かうのは布問屋街。数百メートルに渡って、軒下に色鮮やかなアフリカンプリントの布を垂らしたお店が連なっている。ブリケテリはここカメルーンの首都ヤウンデの中では貧しい地域にあたり、外国人はほとんど見ない。もはや常連ではあるのだが、常に持ち物・行動には注意を払うことが重要だ。車を降りたら、気の向くままに店に入っては布を眺め、ピンとくるまで店を巡る。カメルーンは残念ながら、地元産の布が少ないが、代わりに色々な国の布が手に入るとも言えるだろう。オランダ製、コートジボワール製、ベナン製、ガーナ製、ナイジェリア製・・・。

ボンジュール、と言って店に入り、気に入った・・・かもしれないものがあれば値段交渉したり、どこ産の布かを確認したり、いやいや私中国人じゃないよ日本人だよ、なんて話をしながらお買い物をする。

Photograph: Saki Ito
Photograph: Saki Ito

ここでは基本6ヤード(5.49m)で売っていて、私がいつも買うのは1,200円前後のもの。オランダ製のおしゃれアフリカンプリントなど、12,000円以上するものもある。安い布なのにふっかけられることもある。そんな店は相手にせず、せっせと後にするのが疲れないコツである。

ただ、ブリケテリ地区のいいところは、全体的に人があっさりしていること。「どう?うちの布ちゃんと見てってよ(いいの入ってるから)」とは言われるものの、「んー見たけど、今日ヒット無かったわ。またね」と言えば「あ、そう、OK。またな!」という具合。他の地域で歩いていると変に甲高い声で「ハロー」「ヒーハー(ニーハオ的な)」と声を掛けられ、疲弊している私には、癒しに近いものがあるのだ。まぁ、時々お決まりの「カメルーン人と結婚しなよ!」はあるけれど。時間によっては店先でイスラム教のお祈りをしている人がいたり、散髪(ひげ剃りで頭も刈ります)している人がいたりと、地元民の自然体の暮らしぶりが垣間見えるのも、私が布探索に魅せられている理由の一つかもしれない。

さて、今日の収穫は布2反。これを持って、行きつけの仕立て屋に向かう。

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