持続可能な開発目標(SDGs)の最大のポイントは、経済成長が解決できない問題に焦点を当てていることだ(参照)。たとえば、栄養失調(Malnutrition)は経済成長と相関関係が無いことが確認されているし、不平等・格差も経済成長をもって解決できない問題として認識されている。
持続可能な開発目標(SDGs)で開発援助はどう変わる?
2000年以降のミレニアム開発目標(MDGs)時代では、経済成長を通じた貧困削減が焦点だった。経済成長を通じて国民の所得水準を向上させることで絶対的貧困の問題を解決する。貧困率の計算方法がまさにそうなっていて、こうしたある種の「常識」が開発援助に関わる者の間にあった。
しかし、SDGsには「これだけでは不十分。不平等も同時に解決しなければならない。」というメッセージが込められている。つまり、貧困削減(ゴール1)を達成するためには所得レベルを底上げするために経済成長を促す援助・政策が重要となるが、その結果、不平等を拡大させるような経済政策となるのであれば、ゴール10の達成の阻害要因となる。このような場合、SDGs全体の達成の観点から言えば、そうした政策には大きな欠陥があると言わざるを得ない。
開発援助とターゲティングの重要性
これまで以上に、案件形成段階で成長・貧困・不平等にどういった影響があるかを考える必要が出てくると言えるだろう。インフラ開発によって経済成長を促すことを目的とするのであれば、これまでは周辺住民の「所得向上=貧困削減に寄与」といった一文を入れておけば説明になったかもしれない。しかし、これからは鉛筆を舐めて作文するだけでは納得を得られなくなる。
周辺の裨益住民が中間層・高所得層であれば、貧困層との格差増大に寄与する可能性がある。そうなれば、ゴール1には貢献するが、ゴール10にはマイナス効果となる。誰に裨益するプロジェクトなのかを明確に検討することがこれまで以上に求められることになろう。
日本の援助は元来、ターゲティング手法をそれほど研究・実践してこなかったが、ターゲティング抜きでは何も語れない時代がSDGsによって幕開けされる。
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